本研究では、嚥下反射と呼吸機能の相互作用に及ぼす中枢神経、筋活動性について検討した.まず嚥下反射と呼吸機能の両方に影響を与える全身麻酔薬の作用を検討した。 ヒトを対象とした上気道の抵抗性を測定した実験では、ミダゾラム、プロポフォールによる鎮静法下で睡眠時無呼吸症候群に似た結果が得られ、圧・流量曲線の解析結果から、上気道の抵抗値の上昇は、主に臨界圧の上昇によるものであることが明らかになった.さらに、鎮静法下で切歯間距離が1cm程度では上気道抵抗値を上昇させないが、3cm程度の開口が上気道の抵抗値を著しく上昇させることが明らかになった.鎮静法時の体位変換の影響を検討した実験では、30度の上体挙上と頭部伸展が上気道抵抗値を有意に減少させ、臨界圧も減少させることが明らかになった.これからは、鎮静法時の安全な管理法、睡眠時無呼吸のスプリント治療などの定量的診断法の確立のために重要な基礎データになると考えられた.また、ラットの上気道モデルでの実験では、頸部郭清術に伴う外径静脈の結紮が上気道抵抗値を上昇させることが明らかになった. 本研究では、上記のように圧流量曲線の解析から上気道の抵抗値を定量的に検討する独創的な手法により、きわめて興味深い知見が得られている。現在までの知見は、現在、二つの論文を英文雑誌に投稿中で、また、最新の知見をもとにしたいくつかの追加実験により、睡眠時無呼吸の画期的な治療法を検討中である.
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