研究概要 |
Streptococcus oralisは,口腔常在細菌叢を構成するサングイスレンサ球菌の一菌種で,出産直後の乳児口腔からも検出される.このS.oralisは,スクロースからグルカンを合成する酵素グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)を産生し,その働きによりデンタルプラークの形成に関与すると考えられている.本年度は,昨年度に精製したS.oralisのGTaseの遺伝子をクローニングしその分子生物学的解析を行った. 精製したS.oralis ATCC10557株GTaseのN末端アミノ酸シークエンスを決定した.この配列をもとにS.oralis GTaseをコードする遺伝子を含む8.1kbのDNA断片をクローニングした.DNA塩基配列を決定した結果,このDNA断片にはS.oralis GTaseの制御遺伝子であるrgg遺伝子(861bp)とS.oralis GTaseをコードするgtfR遺伝子(4728bp)が含まれていることが明らかになった.gtfR遺伝子の推定アミノ酸配列上のN末端側にはS.oralis GTaseに特異的な配列が存在することが,他の口腔レンサ球菌由来のGTaseとの多重整列によって明らかになった.また抗生物質耐性遺伝子の挿入により作製されたS.oralis rgg,gtfR遺伝子欠失変異株の性状解析から,rgg遺伝子はGTase産生の正の制御遺伝子であること,gtfR遺伝子はS.oralis GTaseを唯一コードする遺伝子であることが確証された.
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