研究概要 |
本年度はフッ素徐放性を有する歯科材料の歯質強化機能に着目し,その再石灰化促進効果を歯根象牙質を対象としてin vitroで定量的に検討した。材料にはウシ歯根象牙質ブロックを用いた。その根面を研磨して平滑な新鮮象牙質(約15mm2)を露出させ実験歯面とした。はじめに,すべての試料を0.1M乳酸ゲル(6wt% CMC,pH5)に37℃で2週間浸漬して表層下脱灰(脱灰深度ld=115μm,ミネラル喪失量ΔZ=3,820vol%.μm)を形成した。ついで,脱灰歯面中央に直径3mm,深さ約2mmの円形窩洞を形成後,各種フッ素徐放性歯科材料を通法により充填して,唾液基準ミネラル溶液(20mM Hepes,1.5mM CaCl2,0.9mM KH2PO4,pH7)に37℃で2週間浸漬した。また,窩洞を形成せず実験歯面に再石灰化液(2ppmF添加唾液基準ミネラル溶液,pH7)を作用させた群(Rem)を比較のため設定した。処理後,修復材料辺縁の象牙質を対象としてミネラル濃度分布を画像定量法により評価した。その結果,フッ素徐放性材料を応用した3群は,2ppmF併用のRem群と同程度,あるいはそれ以上の再石灰化レベルを示し,いずれもDem群と比較して統計学的有意に低いldならびに*Zを示した(p<0.001)。また,Dem群を除く4群間のANOVAで処理に有意性が検出され(p<0.05),多重比較の結果,ldについてはグラスアイオノマーセメントGICと光硬化型GIO群がRemおよびコンポマーCPM群よりも,またΔZについてはGIO群がCPM群よりも有意に低い値を示した(p<0.05)。以上より,フッ素徐放量に応じた再石灰化の促進が観察され,フッ素徐放性材料は窩洞辺縁の歯質保護に有効であることが示唆された
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