研究概要 |
1.初期齲蝕検出システムの検討 歯質に0.1M乳酸ゲルで初期脱灰を形成し,電気診断装置(ECM)による計測を最長4週間まで継続した。その結果,ECMは深度100オm程度の肉眼的には不可視のエナメル質初期齲蝕をも非破壊かつ非侵襲的に検出できる性能を有することが明かとなった。計測された電気的抵抗値はマイクロラジオグラフィの計測値であるミネラル喪失量および脱灰深度と有意な相関を示し,臨床的にも実用性が高いと考えられた。 2.再石灰化促進性歯科材料の検討 本年度は,再石灰化促進材料について,標準試験方法を確立するため,引き続きin vitroでの再石灰化促進性能試験を続行した。各種条件を実験的に検索した結果,脱灰は6wt%CMCを含有する0.1M乳酸ゲルへの2週間(象牙質)または3週間(エナメル質)の浸漬が最適であった。また,再石灰化は,唾液成分を基準として,1.5mMCa,0.9mMリン酸,20mM Hepes緩衝液および150mM NaClからなるpH7のミネラル溶液への浸漬が最適であることを確認した。 3.複合リスク判定システムの検討 遠隔地のフィールドあるいはクリニックから患者の唾液試料を輸送し,臨床検査センターで歯科リスク検査を実施するシステムの有用性を検討した。その結果,輸送試料によるミュータンス連鎖球菌と乳酸桿菌の生菌数カウントが臨床検査として可能であることを確認した。同システムで12歳児(約100名)と15歳児(約100名)を対象にう蝕リスク検査を行った結果,う蝕経験(DMFT)と唾液中ミュータンス連鎖球菌数が有意な相関を示すことを確認した。
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