研究概要 |
複合リスク判定システムの検討:唾液を検体としてう蝕原因菌であるミュータンスレンサ球菌(MS菌)と乳酸桿菌(LB菌)のレベルを委託検査するシステムを開発し,歯科領域における臨床検査としての有用性を評価した。東北地方の中学生104名および高校生106名を検査対象として,5分間刺激唾液を採取した。同時にプラーク量,フッ素使用の有無,う蝕経験歯数(DMFT),唾液流量,唾液pHを測定した。採取した唾液を臨床検査センターに輸送後,スパイラルプレーターを用いMS菌,MS菌比率,LB菌,総レンサ球菌を定量的に測定した。MS菌比率は総レンサ球菌に対するMS菌の割合を算出した。その結果,中学生,高校生いずれもLB菌とMS菌の菌量は,それぞれDMFTおよびD歯数と有意の相関を示した。また,MS菌数,LB菌数,MS菌比率を0から3までの4クラスに分けスコア化した場合,未処置樋蝕保有者率とこれらのスコアは有意な相関を示し,ハイリスク者のスクリーニングに有用であった。 再石灰化促進材料の検討:馬鈴薯澱粉の加水分解物よりリン酸化オリゴ糖(POs;カルシウム塩)を調製し、このPOsを含有したシュガーレスガムを噛んだ際の分泌唾液を収集、エナメル質の再石灰化への影響を調べた。その結果,POs含有ガムでの処理群では、ldおよびΔZがコントロール処理群に比べて有意に低値であり,POsには明らかな再石灰化促進効果が確認された。 初期齲蝕検出システムの検討:脱灰を形成したエナメル質を再石灰化処理し,電気診断装置(ECM)による計測を継続した。その結果,ECMは深度100μm程度の肉眼的には不可視のエナメル質初期齲蝕のミネラル変化を非破壊かつ非侵襲的に検出できる性能を有することが明かとなり,臨床的にも実用性が高いと考えられた。
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