本研究の目的は、6自由度顎運動測定分析システム((株)東京歯材社・トライメットJKN-1型)の咀嚼運動測定と、非接触式三次元形状計測装置/VMS-250R(UNISN社)による咬合面形態計測を統合処理する分析システムを開発することである。 (1)非接触三次元計測分析システムで基準として用いていた石膏球をセラミック球に変更し、ノイズによる測定精度の低下があったが、サンド・ブラスター表面処理により安定した結果が得られた。 (2)顎運動と咬合面形状の分析を行う目的で、非接触三次元計測分析システムを用いて、咬合弯曲の数学的分析手法について検討を行った。まず正中矢状面に対して垂直な円筒を左右歯列弓上に適合する方法、もうひとつは最小自乗法を応用して二次多項式を適合する方法を用いて検討を行い、分析手法として妥当であることが確認された。 (3)6自由度顎運動測定分析システムの市販クラッチは、広範な部位に接着するため着脱が困難で口唇の閉鎖も難しく自然な咀嚼運動記録できない可能性があった。そこで、独自に設計した新型クラッチ(OrthoClutch-2)を開発し、矯正用接着剤(FujiOrthoLC、GC)を使用したところ、良好な結果が得られた。 (4)顎運動はデータ量が多く、咬合相付近の三次元座標値を客観的かつ定量的に取り出すことが必要である。そこで開発用ソフトウエア言語(Visual Basic 6、Microsoft Co.)で独自の分析用ソフトウエアを開発した。 以上のことから、6自由度顎運動測定分析システムと非接触三次元形状計測システムおよびデータ処理の問題に関する基礎的研究、および新たに開発した咀嚼運動自動分析システムによって、歯科矯正学の診断の分野において重要な不正咬合者の咀嚼運動機能の三次元的な分析システムが構築された。
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