研究概要 |
歯肉上皮細胞における一酸化窒素(NO)産生に及ぼすアデノシンの影響を検討したところ、アデノシンレセプターアゴニストである2-CADO, CPAおよびCGS-21680の刺激により歯肉上皮細胞のiNOS発現およびNO_2/NO_3産生が亢進することから、歯肉上皮細胞からのNO産生制御にアデノシンレセプターA1およびA2aが関与している可能性が示唆された。さらに、同上刺激により歯肉上皮細胞内のcAMP濃度が上昇しcAMP responsive element binding protein(CREB)のリン酸化亢進が認められ、アデノシン刺激による歯肉上皮細胞のNO産生制御には、これらの細胞内シグナル伝達系路が関与している可能性が示唆された。また、歯肉上皮細胞によるNO産生に関しては、IL-15刺激により同上細胞からのNO産生が亢進され、その作用がCytochalasinDにより阻害されたことから、IL-15によるNO産生制御にはERK1/2の活性化が関与している可能性が示唆され、歯肉上皮細胞によるNO産生が複数の細胞内シグナル伝達系路を介して制御されていることが明らかとなった。次に、歯肉線維芽細胞による炎症性サイトカインおよびヒアルロン酸産生に対するアデノシンの影響を検討したところ、IL-1β刺激で誘導されるIL-6, IL-8の産生およびヒアルロン酸合成酵素(HAS)mRNAの発現亢進が2-CADO, CPA, CGS21680刺激および2-CADO、 CPA刺激によりそれぞれ相乗的に亢進することが明らかとなった。また、アデノシンによるIL-6およびIL-8の産生亢進がH89, Ro31-8220およびU73122の添加により抑制されることから、歯肉線維芽細胞内のPKA, PKCおよびPLCがそのシグナル伝達に関与しているものと示唆された。
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