研究概要 |
炎症反応のregulatorとして重要な役割を演じていると考えられているアデノシンが、歯周組織構成細胞の機能に如何なる影響を及ぼすかについて検討した。その結果、歯肉線維芽細胞はアデノシンレセプターサブタイプA1,A2a, A2bのmRNAを発現していること、アデノシンおよびアデノシンレセブターアゴニストの刺激により歯肉線維芽細胞からIL-6,IL-8産生が誘導されること、またその制御機構として歯肉線維芽細胞内のcAMPレベルの上昇、PKA, PKCおよびPLCがそのシグナル伝達に関与していることが示唆された。さらにアデノシンによる刺激は歯肉線維芽細胞からのヒアルロン酸合成酵素mRNAの発現亢進、およびIL-1β刺激により誘導されるICAM-1発現の抑制を惹起することも明らかにされた。次に歯肉上皮細胞へのアデノシンの作用を検討したところ、歯肉上皮細胞もアデノシンレセプターサブタイプA1,A2a, A2bのmRNAを発現していることが明らかにされ、アデノシンレセプターアゴニストの刺激によりiNOSmRNAの発現が亢進し、NO_2^-/NO_3^-の産生も亢進することが示された。また、このNO生産制御には、細胞内cAMPレベルの上昇およびCREBのリン酸化が関与していることも明らかになった。さらに歯肉上皮細胞からのNO産生に関しては、IL-15による制御も受けていることが明らかにされ、その産生制御にはERK1/2の活性化が関与し七いる可能性が示唆された。これらの結果は、歯周組織を構成している細胞群の機能がアデノシンによる制御を受けている可能性を強く示唆している。
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