生命の分子メカニズムに基づく生体高機能性化合物の設計と合成

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11470469
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 今西 武 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (40028866)
• 研究分担者: 小比賀 聡 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (80243252) ; 宮下 和之 大阪大学, 薬学研究科, 助教授 (10166168) ; 土井 健史 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00211409)
• キーワード: ヌクレオシド類縁体 / オリゴヌクレオチド / アンチセンス / ピリドキサールモデル化合物 / 非天然アミノ酸 / 化学発光 / カチオン性リポソーム / 遺伝子導入

研究概要

申請者らは、生命の分子メカニズムに基づく生体高機能性化合物の設計と合成を目指し、以下の4項目について検討を加えた.
(1)糖部コンホメーション束縛型ヌクレオシド類の合成法について詳細に検討を加え、グルコースを出発原料に用いる経路にてその一般的かつ効率的合成系路の開拓に成功した.さらに、得られたヌクレオシド類縁体を常法に従い各種オリゴヌクレオチドへと導入し、それら人工オリゴヌクレオチド類の相補鎖核酸に対する二重鎖形成能について詳細に評価した。その結果、これら人工オリゴヌクレオチド類はこれまでに類を見ないほど優れた二重鎖形成能を示すことを明らかにした.(2)金属イオン捕捉能を有するピリドキサールモデル化合物を合成し、セリン誘導体のメルカプタン類を用いたβ-置換反応による各種S-置換システイン誘導体への変換反応について検討を行った。その結果、本反応は金属イオン存在下特異的に、かつ触媒的に進行することを見出した。また分子内にイミダゾール残基、アミノ基を有するモデル化合物においては反応促進効果が見られ、合成化学的にも非常に有用な反応となることが明らかとなった。(3)ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応の分子レベルでの発光機構解明を目指し、新たなルシフェリン類縁体としてルシフェリンの硫黄原子を酸素及び窒素原子で置換した類縁体の設計と合成を行った。合成した類縁体についてもルシフェラーゼを用いる生物発光能を検討した結果、ルシフェリンに比べてその発光能は弱いものの、ヘテロ原子置換体においても発光は観察されることを見出す共に、構造と発光の相関についても興味深い知見が得られた。(4)安全で効率の高い遺伝子導入法の開発を目指し、面対称構造を有するカチオン性脂質の合成を行った.このカチオン性脂質を用い,調製したカチオン性リポソーム等の細胞への遺伝子導入効率並びに細胞毒性について検討を行い、細胞への遺伝子導入試薬として有効であることを確認した.

研究成果

• [文献書誌] K.Miyashita: "Chiral Environment Specifically Induced by Metal Ion : Asymmetric a Alkylation of a-Amino Esters Pyridoxal Derivatives Having a Chiral Ionophore Function"Tetrahedron. 55・41. 12109-12124 (1999)
• [文献書誌] S.Obika: "Facile Synthesis and Conformation of 3'-O,4'-C-Methyleneribonucleoosides"Chem.Commun.. ・23. 2423-2424 (1999)
• [文献書誌] S.Obika: "Synthesis of a Conformationally Locked AZT Analogue,3'-Azido-3'-deoxy-2'-O,4'-C-methylene-5methyluridine"Tetrahedron Lett.. 40・35. 6465-6468 (1999)
• [文献書誌] W.Yu: "Gene Transfer mediated by YKS-220 Cationic Particles : Convenient and Efficient Gene Delivery Reagent"J.Biochem.. 125・6. 1034-1038 (1999)
• [文献書誌] T.Imanishi: "Syntheses and Properties of Novel Conformationally Restrained Nucleoside Analogues"J.Syn.Org.Chem.,Jpn.. 57・11. 969-980 (1999)
• [文献書誌] S.Obika: "Properties of Cationic Liposomes Composed of Cationic Lipid YKS-220 Having an Ester Linkage : Adequate Stability, High Transfection Efficiency, and Low-Cytotoxicity"Biol.Pharm.Bull.. 22・2. 187-190 (1999)
• [文献書誌] S.Obika: "Preparation and Properties of 2',5'-Linked Oligonucleotide Analogues Containing 3'-O,4'-C-Methyleneribonucleosides"Bioorg.Med.Chem.Lett.. 9・4. 515-518 (1999)
• [文献書誌] S.Obika: "Synthesis of Conformationally Locked C-Nucleosides Having a 2,5 Dioxabicyclo[2.2.1]heptane Ring System"Tetrahedron Lett.. 41・2. 215-219 (2000)
• [文献書誌] S.Obika: "Triplex Formation by an Oligonucleotide Containing Conformationally Locked C-Nucleoside, 5-(2-O,4-C-Methylene-β-D-ribofuranosyl)oxazole"Tetrahedron Lett.. 41・2. 221-224 (2000)