研究概要 |
炭素骨格を主な構造要因とする複雑な有機化合物の構築には立体選択的な炭素-炭素結合形成反応、即ち、位置並びに三次元的な炭素間の結合をいかに制御し、選択的に行なうかが最も基本的かつ重要な課題である。本研究ではWittig型反応による炭素-炭素結合形成反応を伴う高エナンチオ選択的反応の開発を検討し、その一般化と反応の立体化学の予測化の確立、更には得られる生成物である利用価値の高い光学活性オレフィンをキラル合成素子として用いる有用で貴重な生理活性物質の効率的不斉合成への応用を目的として純化学的な手法による速度論的分割について検討し、現在まで下記の結果を得ている。 1)軸不斉ビナフトールを不斉補助剤とするキラルフォスフォネートを用いてラセミックなカルボニル化合物の速度論的分割による不斉オレフィン化を行い置換シクロヘキサノン誘導体を中程度のエナンチオ選択性で得た。 2)ジエン金属(鉄)錯体のアルデヒド体の速度論的分割につき検討し、回収原料と生成物共に高いエナンチオ過剰率で得ることに成功した。 3)アルファ位にヘテロ官能基を有するアルデヒド誘導体、特に,窒素官能基を持つ化合物であるアミノアルデヒド体を各種合成し、速度論的分割を試みたところN-アシル保護体について生成物に高いエナンチオ選択性が認められ、本方法は非天然型の以上アミノ酸誘導体合成への新しい道の一つを提供した。 4)不斉補助基として用いたビナフトール部の3,3'位の置換基効果を調ベ、ラセミックな基質に対する適合性、塩基や温度等の反応条件につき検討した。 5)速度論的分割による本不斉合成の一般化の確立に必要な生成物と回収原料の立体化学の決定を行い、反応機構の合理的な考察を行なった。 6)設備備品として購入した分取用リサイクルHPLC本研究を遂行する上で極めて有用であり、研究効率の飛躍をもたらし不可欠な装置となった。
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