本研究では、新規な水溶性ポルフィリンを設計・合成し、様々な塩基配列を持つDNAに対する切断活性の測定を通して、塩基配列特異的な遺伝子切断試薬を開発する。まず、核酸塩基に対する特異性を向上させるため、GC塩基対に親和性の高いアクリジンを持つポルフィリンを合成した。ピロール、4-ピリジンアルデヒド、テレフタルアルデヒド酸メチルを4:3:1のモル比でプロピオン酸に混合し、1時間還流させた。シリカゲルカラムを用いた分離操作により、反応液からポルフィリンを回収した。一方、クロロメトキシアミノアクリジンを種々のポリアミンと50度で還流させることにより、アミノリンカーとアクリジンとを縮合させた。ポルフィリンのカルボン酸部分をカルボニルジイミダゾールにより活性化し、アクリジン部分を加えることにより脱水縮合させた。シリカゲルカラムを用いて精製し、ヨウ化メチルでピリジル基を4級化して目的物を得た。一方、AT塩基対に親和性の高いポルフィリンを得るため、末端にアミノ基を持つ触手型ポルフィリンを合成した。まず、種々のアミノ酸をBOC-チオジメチルピリジンと反応させ、アミノ基をBOC保護した。再結晶により精製後、水溶性カルボジイミドを用いてアミノフェニルポルフィリンと縮合させた。トリフルオロ酢酸処理によりBOC基を脱保護し、再結晶により目的物を得た。これらポルフィリンはDNAに対して良好な親和性を示し、また光照射により効率的にDNAを切断できることがわかった。
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