研究概要 |
炎症細胞(好中球、好酸球、マクロファージ、マスト細胞、気道上皮細胞)の機能発現におけるMAPkinase (MAPK)の関与について、p44/42 MAPKの活性化を抑制するMEK阻害薬,PD98059、及びp38 MAPK阻害薬SB203580を用いて解析し、以下のことを明らかにした。(1)好中球をstaurosporineで刺激するとケモカインmacrophage inflammatory protein-2 (MIP-2)が産生される。p44/42 MAPK及びp38 MAPKはMIP-2 mRNAの安定性の増大及び翻訳に関与している。(2)IL-5による好酸球の生存延長はp44/42 MAPKは関与していないが、炎症局所に浸潤したのちの好中球のアポトーシスにはp38 MAPKの持続的な活性化が関与している。(3)マクロファージをstaurosporineで刺激するとアラキドン酸代謝が亢進する。p44/42 MAPKはcytosolic phospholipase A2をリン酸化してアラキドン酸遊離の増大に大きく関与している。また、thapsigarginやLPS刺激によるヒスタミン産生の増大はヒスチジン脱炭酸酵素の誘導によるもので、その転写にp44/42 MAPKが大きく関与している。(4)マスト細胞において、抗原刺激によるinterleukin-4の産生にはp38 MAPKが部分的に関与している。(5)気道上皮細胞株NCI-H292細胞において、インターフェロン-γ刺激による接着分子ICAM-1の発現にはp44/42 MAPK及びp38 MAPKはいずれも関与していない。さらに、p44/42 MAPK及びp38 MAPK阻害薬とステロイド性抗炎症薬の効果を比較したところ、MAPK阻害薬はステロイド性抗炎症薬の薬理作用の少なくとも一部については同等の作用を示すことが明らかになり、MAPKがステロイド性抗炎症薬と同等の効力を持つ新規抗炎症薬、あるいはステロイド性抗炎症薬の投与量を減少させる薬物を開発する上での標的分子になりうることが示唆された。
|