抗体産生において神経ペプチドやサイトカインとの相乗作用を示すものはビタミンとしてはアスコルビン酸(AA)のみであり、AAが神経-免疫相互対話の機構を円滑かつ効率良く働かせるための増幅因子として作用することが考えられる。AAは物理化学的に不安定であり、in vitro培養系で活性を評価することが困難であっため、効率良く細胞及び組織に浸透し、AAとしての作用を発揮するAA誘導体の開発を行った。10年前に安定型AA誘導体として開発に成功している2-O-α-D-glucopyranosyl-L-ascorbic acid(AA-2G)のAA側6位に種々の長さの脂肪酸を選択的に結合させ、新規親油性安定型AA誘導体(6-Acyl-AA-2G)の開発に成功した。これら一連の誘導体は酸化的条件下において安定であるばかりでなく、脂肪酸の部分の炭素数が増えるに従い親油性が強まり、皮膚組織への浸透性、腸管からの吸収性が優れたものとなった。さらに、6-Acyl-AA-2Gは体内でエステラーゼ及びα-グルコシダーゼにより脂肪酸とグルコースを酵素的に遊離し、AAとなり、従来から知られているビタミンCの生理・薬理作用(抗壊血病作用)を発揮することが示された。現在、AA-2G及び6-Acyl-AA-2Gを用い、神経細胞・免疫担当細胞における各種サイトカイン・神経ペプチド共存下での相乗作用の有無につき検討した結果、神経・免疫クロストークにおけるAAの役割の一部が判明した。一方、抗原特異的抗体産生やcAMP誘導性神経突起伸長作用が、AAやAA-2Gに比べ6-Acyl-AA-2Gが低濃度で顕著に増強することを見いだしている。さらに、6-Acyl-AA-2Gの酵素的合成に成功し、工業化への道が確立されつつある。それらの結果を既に論文にまとめ投稿した。
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