1)PHBPに関する研究 PHBP(Plasma Hyaluronan-binding Protein)は、1996年に研究代表者らがヒト血漿より発見した。その構造は、3個のEGF、1個のクリングル、セリンプロテアーゼ・ドメインからなり、1個所切断されると、プロテアーゼ活性を発現する。しかし、まだ生体内での役割を解明できていない。そこで本研究においてPHBP遺伝子ノックアウトマウス(KO)を作製することで生理活性を解析することにした。本研究では、まずマウスPHBPの遺伝子構造を決定した。次に第一エクソンを含む約1kbをネオマイシン耐性遺伝子と組換えるためのターゲティングベクターを構築した。これを用いてPHBP遺伝子KO-ES細胞のクローニングに成功し、現在、KOマウスを作製中である。 2)IHRPに関する研究 IHRP(Inter-α-trypsin inhibitor Heavy chain-Related Protein)は1996年に研究代表者らがヒト血漿より発見した。その構造は約70%がITI-重鎖と相同性を示すが、トリプシン阻害活性はない。IHRPは実験動物では代表的急性炎症期蛋白質であることが明らかになった(ヒトでは急性炎症期蛋白質ではない)。IHRPも生理活性が不明であるためにKOマウスを作製して解析することにした。現在、マウスIHRP cDNA塩基配列を決定し、遺伝子構造を解明したところである。 3)GBP-28に関する研究 上記の研究中にヒト血漿よりGBP-28(Gelatin Binding Protein of 28 kd)を発見した。GBP-28は脂肪細胞が特異的に発現しているmRNA・apM1として松沢ら(大阪大医)が報告した翻訳産物であった。後に松沢らは本蛋白質をアディポネクチンと命名した。昨年、本蛋白質は糖尿病薬になる可能性が発表され注目され始めたので、急遽、KOマウスを作成中である。
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