病態時の肝臓では、炎症性サイトカインによる様々な遺伝子の発現誘導がその機能不全と深く関連している。インターロイキン1β(IL-1β)などにより誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、多量の一酸化窒素(NO)を産生する。NOは肝障害そのものを引き起こしさらに悪化させる作用と逆にその障害を減弱化する相反する2つの作用をもつ。しかしながら転写因子NF-κBを介したiNOS誘導の制御メカニズムの詳細は不明な点が多い。本研究では動物モデルと初代培養肝細胞を用いて、IL-1βのiNOS/NO誘導をコントロールする内因性、外因性物質の作用機構を明らかにした。 iNOSプロモーターのκB部位へのNF-κBの結合にはC/EBPβの関与が示唆された。さちにNF-κBのvicinalthiol残基が、DNA結合に重要な働きをしている事が明らかになった。一方、低酸素によるiNOS誘導の抑制はNF-κBの活性化(核移行とDNA結合)にはまったく影響を与えないことより、iNOS誘導にはNF-κBの活性化に加えてIL-1βから同時に立ちあがるシグナル(因子)の存在が必須であることが予想された。この未知シグナルを解明することが、iNOS誘導のメカニズムを明らかにする近道と考える。多くの内外の因子がそのシグナルを介して、実際にNO産生の誘導をコントロールしている可能性が高い。
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