研究概要 |
本研究の構成は、[1]ヘムーチオレート構造の特性解明;[2]新しいタイプの選択的なヒトNOS阻害剤の開発;[3]ルテニウムポルフィリン-N-オキシド系のガン治療応用に向けた検討とするが、初年度は基礎的要素の大きい[1],[2]を中心に行った。まずシトクロムP450活性中心の特徴的構造であるヘムーチオレートの酸化触媒反応性に関して、硫黄原子へのタンパク分子からの水素結合の影響を検討した。NH-S水素結合を活性中心モデルを合成し、水素結合を有さないモデル(SR錯体)との比較を行うと、構造的には鉄一硫黄結合距離が水素結合を受けることにより短くなることが明らかとなった。反応面では、THFの配位定数を測定した結果ルイス酸性高まることがわかったほか、アルカンーアルケンの競争的酸化反応を検討し、水素結合型の方が親電子性の高まったことを示す結果を得た。 次に、NO合成酵素(NOS)の阻害剤に関しては、これまでにヘムへの配位性を有するヘテロ環類およびイソチオウレア構造を有するジペプチド型化合物を開発し、イソ酵素選択性においてはジペプチド型のL-S-メチルイソチオシトルリニル-L-フェニルアラニンが特に優れていた。今年度は詳細な構造活性相関を検討するためにL-PheをL-Trp,L-Tyr,L-フェニルグリシン等に置き換えたジペプチド類を合成した。またNOSについてはヒトのイソ酵素を昆虫細胞(Sf9)に発現させて得ることを検討した。その結果、現在までにeNOS,nNOSの発現、精製に成功した。ヒトnNOSの阻害実験結果は、これまでのマウスのnNOSのアッセイ結果と良い一致を示し、nNOSに関しては種差は小さいことがわかった。またeNOSに関してはどれも低活性であり、nNOSとの活性の差が見られた。
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