研究課題/領域番号 |
11470501
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 助教授 (40211718)
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研究分担者 |
佐藤 純一 宮城大学, 看護学部, 教授 (70295377)
佐藤 哲彦 熊本大学, 文学部, 講師 (20295116)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
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キーワード | 病気 / 健康 / 医療社会学 / 医療人類学 / 文化 |
研究概要 |
本年度の予備的研究から明らかにされたことは以下のようなことがらである。 病気と健康の概念とは、生活を営む人間の社会構造と深く関わったものであるという学問的合意は1950年代から北米の医療社会学者たちによって先鞭がつけられ、その後の70年代における医療人類学の台頭によって認識論的相対化がおこなわれたものであるが、それ自体があまりにも自明な概念であるために、病気と健康の概念の日常的な使用の様態については、じゅうぶんに実態として把握され、社会学的にじゅうぶん解明されてこなかったことである。1980年代以降、消費行動がマスメディアの影響を強く受けるようになる欧米をはじめとする先進諸社会では、病気と健康の日常的概念が人生の意味などを問う心理的契機になる以上に消費文化の中で流通する<記号>となる側面に社会の関心が移行した。生産中心の産業社会から消費中心の情報社会への移行は、病気と健康の概念そのものは言説として構築され、マスメディアを中心とした流通に乗る記号として解読することが有用であった(健康言説の流通とその社会基盤についての発見)が、その社会的背景への再考も求められている。また、消費を支える行為主体という観点からの予備的研究(例えば薬物利用者やフィットネス・クラブ会員などへの聞き取り調査)からは、病気と健康の概念は、当該の文化が与える社会的通念や知識と自己の身体意識との間を取り結ぶ<民衆的イディオム>(例えば、紋切り表現や定式化された語り口)として把握されることが明らかにされており、こちらもまた会話分析や言説分析などの手法によってより詳しく解読される必要が生じた。
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