研究課題/領域番号 |
11470501
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 教授 (40211718)
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研究分担者 |
佐藤 純一 高知医科大学, 教授 (70295377)
佐藤 哲彦 熊本大学, 文学部, 助教授 (20295116)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
寺岡 伸悟 甲南女子大学, 文学部, 助教授 (90261239)
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キーワード | 病気 / 健康 / 医療社会学 / 医療人類学 / 文化 |
研究概要 |
本年度は前年度で明らかにされた消費文化の中で流通する<記号>としての病気と健康の日常的概念を、(1)広い歴史的および社会的諸相のもとで解明すること、ならびに(2)現代における具体的な病気と健康に関する社会的諸実践の実例の中に求めることを課題として研究を進めた。 (1)歴史的および社会的視座からは、近代日本における専門職としての医師の制度化の過程について研究した。その結果、(a)明治維新以降の日本の医療の「西洋」化の基礎は、きわめて短期間に固められたこと、(b)既存の漢方医の抵抗があったが、明治政府は巧みな移行措置を講じることによって抵抗の運動を骨抜きにしていったこと、(c)医師の専門職化が政府の主導で進められていったこと、(d)(b)に関連して、医師の専門職団体の形成は政府によって主導され、またその結果として、団体の自律性は脆弱であったこと、(e)専門職としての医師の制度化は知の枠組みの導入、医学教育と密接な結びつきを持っていたということ、などが明らかにされた。 (2)病気と健康に関する社会的諸実践については、近年の健康ブームについて引き続き事例研究を積み重ねた。特に、中高年を中心としたハイキングなどのアウトドア・ブームや、温泉ブーム、そして産地直送農産物への関心、さらに「体験農業」といった視線から、都市生活者に、その居住地の「外部」にある「農山村」というエリアを「発見」させ、意味的に再構築させていく過程を、奈良県や熊本県を中心に実証的にフィールドワークして調査研究を進めた。 以上のことより、病気と健康の日常的概念に関する、近代化にともなう情報と知識の流通にかんする一般的傾向以上に、我が国おける歴史的ならびに社会的背景の特異性-いわゆる「日本的特殊事情」-の実態が明らかになった。また、健康の意識形成に与える地域社会の影響の大きさが明らかになった。最終年度にむけて、民族誌(エスノグラフィー)的事例研究の重要性が再認識された。
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