研究課題/領域番号 |
11470501
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 熊本大学, 文学部, 教授 (40211718)
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研究分担者 |
佐藤 純一 高知医科大学, 教授 (70295377)
佐藤 哲彦 熊本大学, 文学部, 助教授 (20295116)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部, 教授 (20040503)
野村 一夫 國學院大学, 経済学部, 教授 (00338279)
寺岡 伸悟 甲南女子大学, 人間科学部, 助教授 (90261239)
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キーワード | 病気 / 健康 / 文化 / 医療社会学 / 医療人類学 |
研究概要 |
3カ年にわたる研究の最終年度は、これまでの研究を総括し次のような結論を得た。 全体の調査計画全体には次の仮説を検証するものであった。 (1)病気と健康の日常的概念は、人びとのライフコースの中で社会的・文化的に構築される。 (2)その概念は、個々人の身体経験の諸相と外部からの認知的学習過程という2つの構築過程が認められる。 それらを実証するために次の2つの調査研究を実行し次のような結果を得た。 (1)人間の認知に関する発達心理学や児童の社会化に関する社会学の諸研究を渉猟し、個人の体験が社会経験として共有される過程やそれを可能にする社会的条件についての事実に関する試料を収集した。その結果、一般的傾向として次のようなことが指摘される。病気と健康についての日常的概念は、公的教育ならびにマスメディア媒体を通して影響力を受けるものの、それらの効果は一過性のものであり、身体を機軸にした慣習行為から形成される日常的概念は、比較的長期にわたって社会的・文化的に構築されるものであるといってよい。 (2)我々が経験するライフヒストリー事例の中に、これらの日常的概念を採集し、社会分析をおこなった。全体主義システムや強い学校教育制度が崩壊した現在では、健康に関する社会の中心的な規範が後退した。そのため病気と健康の日常的概念の社会的構築は、社会の中の局所的集団(家族や職場)の中でおこなわれ、またマスメディア受容様式の個人化の中で、病気と健康の日常的概念の社会的構築の様式は、おなじ社会のなかでも多様化の度合いを深めつつある。これは非専門職の普通の人々だけでなく、医療専門職においても専門分化が進み、健康の全体性(health as wholeness)を提示できない現状が明らかになった。
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