研究概要 |
(1)hMLH1遺伝子変異解析のための出芽酵母システムを、特にマーカー遺伝子の点で改良し、LacZ,GFP,ade2遺伝子でモニターできるようになった。hMLH1遺伝子変異の機能診断のために既に改良済みのアッセイを用いて、hMLH1遺伝子機能を各機能ドメインごとに導入した変異について機能解析を行った。この結果、C末端側変異は、PMS2との蛋白質間相互作用に影響を及ぼすことが示唆された。ヒト培養細胞を用いたhMLH1遺伝子機能解析方法を開発するために、哺乳動物用GFP発現ベクターのGFPの翻訳開始コドンの3'側に1塩基繰り返し配列を導入することにより長期培養でホストのミスマッチ修復能をモニターする事が可能であった。 (2)合成オリゴヌクレオチドによるコドンランダマイゼーション法により遺伝子正常cDNA鋳型にアミノ酸置換を伴うような1塩基置換を導入することを開始した。この際、多検体PCR反応により、一度に多種類の1塩基置換を作成する。選択された遺伝子変異DNAクローンの変異の同定を既設のDNA自動シークエンサーを用いて行った。当初hMLH1遺伝子のみを対象としていたが、種々の技術的問題が生じているため、これを克服するためにp53がん抑制遺伝子やPTEN遺伝子(どちらも翻訳領域が約1.2kbとhMLH1遺伝子の約半分の大きさ)を用いた系統的変異導入を行い、条件検討を再検討した。その結果、PTEN遺伝子のミスセンス変異42種類のPTENタンパク質の機能へ及ぼす影響を野生型PTENが有するin vitroのphosphoinositide phosphatase活性を指標に機能解析した結果、大部分(42種類中38種類、90%)の変異は正常PTEN機能を障害しており、がん抑制に重要なPTENの機能はphosphoinositide phosphatase活性であることが明らかになった。この過程で、部位特異的変異導入にはPCRメガプライマー法が最も有用であることが明らかになった。
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