研究概要 |
ヒトDNAミスマッチ修復遺伝子hMLH1の変異の検出と機能評価のための手法を開発するために、基礎的・臨床的検討を行った。(1)hMLH1遺伝子変異解析のための出芽酵母システムを、特にマーカー遺伝子の点で改良し、LacZ, GFP, ade2遺伝子でモニターできるようになった。hMLH1遺伝子変異の機能診断のために既に改良済みのアッセイを用いて、hMLH1遺伝子機能を各機能ドメインごとに導入した変異について機能解析を行った。この結果、C末端側変異は、PMS2との蛋白質間相互作用に影響を及ぼすことが示唆された。ヒト培養細胞を用いたhMLH1遺伝子機能解析方法を開発するために、哺乳動物用GFP発現ベクターのGFPの翻訳開始コドンの3側に1塩基繰り返し配列を導入することにより長期培養でホストのミスマッチ修復能をモニターする事が可能であった。(2)網羅的ミスセンス変異導入法を開発、遺伝子翻訳領域内に1塩基置換によって生じうる全てのミスセンス変異を構築し、個々の変異を酵母内に発現してその機能を野生型タンパク質と比較する方法を開発した(特許出願準備中、論文投稿準備中)。この方法により、網羅的ミスセンス変異(2314種類)を有するがん抑制遺伝子産物p53変異ライブラリーを構築し、機能評価を行いデータベース化している。現在、hMLH1の網羅的ミスセンス変異を構築中であり15%終了した。今後約1年半でhMLH1翻訳領域内に1塩基置換によって生じうる全てのミスセンス変異(約4800種類)を構築する予定である。遺伝性非ポリポーシス大腸癌のうちhMLH1変異によるものは約30%であり、そのうち35%はミスセンス変異である。これらのミスセンス変異のうち一部は腫瘍発生に関与しないSNPであると考えられる。出芽酵母と哺乳動物培養細胞系を用いたhMLH1機能診断系の開発と、網羅的ミスセンス変異の機能解析との組み合わせにより、遺伝子診断に必要な変異・SNPの鑑別のための情報提供が可能になる他、hMLH1の機能・構造相関解析に関するデータベース化を目指している。
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