研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、Crohn病の病因・病態の解明を目的として、今年度は、以下の検討を行った。 1.RA滑膜に発現が増強する遺伝子をdifferential display法を用いて検索し、FRP,Id family,MEA11などの発現を検出した。Idは細胞分化・増殖の制御、血管新生に関与するため、機能的にRAの病態に深く関連する可能性が考えられ、さらに、その遺伝子群は染色体上のRA候補領域に位置するため、疾患感受性遺伝子としての可能性も考えられる。本年度は、これらのうち、1p36に位置するID3の変異解析を施行し、2個所の単一塩基多型(SNP)と、非同義置換をコードする1個所の稀な変異を検出した。 2.同様に、Crohn病の腸管病変部に発現増強する遺伝子として、FLIPなど、興味深い遺伝子群を検出した。 3.B細胞のシグナル伝達分子であり、マウスモデルにおいて自己免疫との関連が強く示唆されているCD19を候補遺伝子と考え、変異スクリーニングを施行した。多数のSNPに加え、3'非翻訳領域(UTR)にGTリピート多型が見出された。うち、翻訳領域の同義置換、イントロンのSNP、3'UTRの反復配列の多型とSLEとの有意な関連が検出された。 4.FcγRIIBはB細胞・単球において抑制性シグナルを伝達することが知られ、また、この遺伝子が位置する1q23領域はSLEの候補領域であることから、FCGR2Bを有力な候補遺伝子と考え、変異解析を行い、翻訳領域にアミノ酸置換を伴う多型を検出し、SLEと有意に関連することを示唆する結果を得た。 5.このほか、SLE,自己免疫との関係が近年特に注目されるCD80,CD86,OX40L,BCMA,NKG2Aの多型解析を行い、多数の新規の多型を検出した。
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