研究概要 |
7番染色体(7q32)領域上に存在すると考えられるゲノム刷り込み遺伝子を同定・単離し、Silver-Russell症候群(SRS)を代表とする子宮内発育障害(IUGR)との関連を明かにすることを目的として研究を行った。SRSの候補領域である刷り込み遺伝子PEG1/MESTを含む7q32領域のゲノム刷り込みを検索するため、最初に同領域の1.2-MbのPAC/BACクローンによるコンティグを構築し、さらに同コンティグ上で、既知のEST/遺伝子をマップし、転写・発現地図を構築した(Genomics,2000)。この結果、9個の新規遺伝子、6個の既知遺伝子、70個の新規STSを同定し、同領域に新たな刷り込み遺伝子CIT1と刷り込みドメインを確認した(Genomics,2000)。一方、雑種体細胞パネルを用いた7q32刷り込み関連遺伝子の系統的な単離の研究を開始し、新規刷り込み遺伝子と思われる6個の遺伝子/ESTを同定し、現在その詳細な刷り込みパターンを解析中である。現在までに、7番染色体上の2つの刷り込み遺伝子(GRB10とMEST)がSRS候補遺伝子として想定され、特にGRB10ではSRS患児2名にP95Sの変異が報告されているが、筆者らは正常者の2/336名において同変異が同定した。従って、GRB10のP95Sの変異は稀な多型であり、SRSの原因となっているとは考え難い。MESTに関してもSRS患児においてプロモーター領域のメチル化変異、新生変異の有無を検索したが、いずれも同定されず、SRSの原因遺伝子である可能性は低い。現在、新規に同定した7番染色体上の刷り込み遺伝子に関してSRS患児において変異の有無を検索中である。
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