SRS責任部位の同定と候補遺伝子解析:1例の異常核型をもつSRS患者における多型マーカーを用いたアレル型解析の結果、7p13-q11領域は両アレルが検出されたのに対して、それ以外の領域では母性アレルのみが検出された。したがって、SRS責任部位は7q11-qterだと考えられる。7番染色体上の2つの刷り込み遺伝子(GRB10とMEST)がSRS候補遺伝子として想定されているが、雑種体細胞パネルを用いた刷り込みパターンの解析およびメチル化解析の結果、両遺伝子共にSRSの原因ではないと結論した。 7q32領域のPACコンティグの構築:7q32領域における刷り込み遺伝子クラスターの存在を確かめるために、MESTを含むコンティグを構築した。結果として、D7S530とD7S649間の1.2Mb領域にわたるコンティグを構築し、9個の新規遺伝子と6個の既知遺伝子、および70種の新規STSを同定した。 7q32領域における刷り込み遺伝子の同定:上記遺伝子のうち、刷り込みを証明もしくは否定したのは、MEST、COPG2、COPG2IT1、KIAA0265、CPA3、CPA1、TSGA14の7種である。MESTとCOPG2IT1は父性発現、CPA3は部分的母性発現する刷り込み遺伝子であった。GCOP2は従来父性発現遺伝子とされていたが、両アレル発現であり刷り込みを免れること、しかし新規EST(COPG2IT1)はGCOP2のイントロン20のアンチセンス転写物であり、胎児組織では父性片アレル発現することを証明した。CPA3は、ヒト胎児心・腎・肺、成人前立腺組織では部分的刷り込みを示した。COPG2、KIAA0265、CPA1、TSGA14は両アレル発現であり刷り込みを否定した。これらの結果は、7q32領域は刷り込みドメインとして強く制御されず、独立した刷り込みシグナルによって制御されていることを示す。
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