研究課題/領域番号 |
11470510
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊賀 立二 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60012663)
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研究分担者 |
大橋 聖子 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (10292939)
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キーワード | 薬剤性パーキンソニズム / P-糖タンパク質 / シクロスポリン / ドンペリドン / L-dopa / パーキンソン病モデルラット / PK / PDモデル |
研究概要 |
1)薬剤性パーキンソニズム発症の危険因子に関する研究-P-糖タンパク質の影響- 血液-脳関門(BBB)に発現するP-糖タンパク質(P-gp)は、薬物などの異物を脳内から排除する機能を担っている。本研究では、P-gpの阻害薬を併用した際の中枢作用性薬物の薬効変化を解析した。阻害剤としては免疫抑制剤であるシクロスポリン(CyA)を、中枢作用性薬剤としてはドパミンD2受容体遮断薬であるドンペリドン(DOM)を用いた。実験方法としては、DOMの副作用である錐体外路症状の指標として、マウスに各薬物を投与後のカタレプシー発現を解析することとした。結果として、CyAを併用(経口投与)した群では、DOMによるカタレプシー発現が有意に亢進した。CyA併用によりDOMの脳内濃度が顕著に増加したことと、血中濃度は変化しなかったことより、DOMの脳内移行性がCyAによって著しく亢進して、その副作用である錐体外路症状が見られたものと考えられた。つまり、DOMの中枢性副作用は通常はP-gpの機能によってマスクされているが、P-gp阻害剤併用などでP-gp活性を低下させることにより発現することが明らかとなった。 2)パーキンソン病治療薬の体内動態と薬効発現との関係解明 パーキンソン病は主に中高年期に発症する神経変性疾患であり、中脳黒質のドパミン神経の変性・脱落によって線状体でのドパミン含量が低下するために発症するといわれている。その治療には、BBBを透過し中枢でドパミンに代謝されるL-dopa製剤が繁用されている。本研究では、パーキンソン病モデルラットを作成して、血漿・脳組織中L-dopa、ドパミン濃度とL-dopa誘発性回転運動との関係を検討し、薬効発現とその変動を規定する因子を検討した。その結果、パーキンソン病モデルラットでは、破壊側線状体においてドパミンの分泌が完全に抑制されていることが確認され、その線状体中ドパミン濃度と回転運動の間にHill式で表される飽和的関係が示された。さらに、線状体シナプス標本を用いたin vitro binding studyによりD2受容体への親和性を測定し、その親和性を考慮した薬動力学(PK/PD)モデルを構築したところ、L-dopa投与後の薬効(回転誘発運動)の時間推移を良好に説明することができ、本モデルを用いてL-dopaの薬効を予測できる可能性が示唆された。
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