研究概要 |
ウサギ大腿動脈血管組織から遊離されるスーパーオキシドを、ルシゲニンを用いたケミルミネセンス法により測定した。Protein kinase C(PKC)活性化薬であるホルボール12,13-ジブチレイトは、内皮温存および内皮除去標本でケミルミネセンスのシグナルを増加させ、そのシグナルの増加はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の投与により速やかに減少した。また、ルシゲニン発光はPKCの選択的阻害薬であるGF109203やNAD(P)H系阻害薬であるジフェニレンヨードクロライドにより抑制された。このことより、PKCの活性化がNAD(P)Hオキシダーゼを活性化させることにより、血管平滑筋や内皮細胞でのスーパーオキシド生成を促進させることが明らかとなった。内皮除去血管組織において、ヒポキサンチン+キサンチンオキシダーゼで発生させたスーパーオキシドはノルアドレナリン-収縮を抑制した。この弛緩反応はSODで促進され、カタラーゼで抑制されたことより、血管組織で発生したスパーオキシドはSODで分解され、H_2O_2に変化することにより血管に作用し、血管を弛緩させている可能性が明らかとなった。一方、H_2O_2はcyclooxygenase依存性に、血管平滑筋細胞膜のK_<ATP>-channelsの活性化により膜を過分極させた。このことより、H_2O_2による血管弛緩機序にK_<ATP>-channels活性化による膜過分極が関与している可能性が示唆された。β-escin skinned血管標本において、ノルアドレナリン+GTPは0.3μM Ca^<2+>による収縮を増強した。また、H_2O_2はノルアドレナリン+GTP存在下、非存在下でのCa^<2+>-収縮に影響を与えなかった。このことより、H_2O_2は血管平滑筋の収縮蛋白系のCa^<2+>-感受性に対して直接的な抑制作用を有していないことが明らかとなった。
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