血小板は、止血に中心的な役割を果たすばかりではなく、血栓症の発症や動脈硬化の進展にも関与している。したがって生体内の血小板の活性化の程度を知ることは、血栓症発症の予知や、抗血小板剤投与の適応の決定などに重要である。今回、フローサイトメトリーを用いた血小板活性化測定について基礎的検討をおこなうとともに、その臨床的意義について検討した。 まず、新規の血小板活性化抗原の発現について検討した。洗浄血小板浮遊液を作成後、トロンビンないしコラーゲンで刺激、一定時間後に固定し、血小板表面に発現する活性化抗原をフローサイトメトリー法にて測定した。CD63はCD62P(p-セレクチン、GMP-140)と比較し、より早くより強く発現された。新規な活性化抗原とされるCD107aおよびCD107bも同様に刺激後の発現の増強を認めたが、CD62Pに比べ軽度であった。活性化されたGPIIb/IIIaと結合するとされるPAC-1も刺激後結合の増強を認めたが、緩徐であった。トロンビンレセプター抗体と考えられているSPAN12抗体とWEDE15抗体のうち、SPAN12は、コラーゲン刺激後に結合の増強を認めたが軽度であった。 次に、採血後の血小板活性化の程度を血小板表面へのCD62PおよびCD63の発現ならびに血漿中へのβ-トロンボグロブリンの放出で検討した。EDTA採血ならびにクエン酸ナトリウム採血では経時的に血小板は活性化されるのに対して、抗凝固剤(EDTA、クエン酸ナトリウム)と抗血小板剤(アデノシン、テオフィリン)の合剤による採血で、氷水中に保つと血小板活性化は抑制された。採血から固定までの検体の保存法と、フローサイトメトリー測定の標準化を確立する。 さらに、血小板表面のCD36の有無と血小板活性化の関連をフローサイトメトリーを用いて解析し、血栓症発症のリスクファクターとなるか否かについても検討した。
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