研究課題
この研究では、現代社会において深刻な問題となっている肥満の予防・治療に貢献する運動処方の確立を目指し、安全で有効な有酸素運動を心臓自律神経活動を基準にして評価し、最適な運動処方の開発を目指すとともに、習慣的な運動実践がもたらす自律神経活動動態、肥満遺伝子レプチン、および血圧・循環調節ホルモンなどに対する影響を総合的に解明しようとするものである。平成13年度の実験では前年度までに確立した手法を用い、運動負荷試験中の心臓自律神経活動動態、とくに心臓副交感神経活動を基準にした「安全運動閾値」で運動処方箋を作成し、生活習慣病のリスクが高く、自律神経活動の低下した肥満者を対象に12週間の運動トレーニングを実施した。その結果、「安全運動閾値」での運動トレーニング12週後では、血圧、血中コレステロール、中性脂肪、HDL及びLDL-Cコレステロール、体脂肪、等々の生活習慣病リスクファクターや心臓自律神経活動が有意に改善した。また、強力な血管収縮物質であるエンドセリンやストレスホルモンであるカテコラミンおよび心負担度の指標である脳性ナトリウム利尿ペプチドの増加が運動中に認められなかった。これらの自律神経活動の可逆的効果から、「安全運動閾値」での運動は、心臓に負担が少なく、中年肥満者におけるエネルギー代謝機構を改善し肥満を解消させるだけでなく、虚血心疾患や突然死を予防する可能性があることが示唆された。
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