本研究課題の『高所身体適性予測のための生理学的指標の開発・応用に関する研究』では、高所登山やトレッキングを行う登山家や一般人のために高所での身体適性を事前に予測するための適切な生理学的指標を見いだし、その応用を図ることを目的としている。そこで、初年度は、まず、呼気ガスモニター、呼吸用フローヘッドおよびスパイロアンプと現有のA/D変換器であるマックラブ・システムを用いて、低酸素換気応答テストおよび高二酸化炭素換気応答テストが実施可能となるシステムの構築を行った。システム構築後に常圧下および急性低圧低酸素環境下における安静時及び運動時の呼吸系応答特性に関する検討を行った。常圧下において、一般健常男子学生(5人)および高峰を目指す健常男子登山家(5人)の最大酸素摂取量を現有の全自動代謝量測定装置によりbreath by breath法を用いて測定し、有酸素的作業能の評価を行った。次に、常圧下および低圧シュミレーターを用いた急性低圧低酸素環境下の安静時において、Weilらのprogressive hypoxia法による低酸素換気応答テストを行い、抹消化学受容器の感受性の評価・検討を行った。また、急性低圧低酸素環境下における運動時動脈血酸素飽和度動態についても検討を加えた。これらの結果、一般男子学生と比較して登山家の低酸素換気応答特性は有意に高く、また、急性低圧低酸素環境下における運動時動脈血酸素飽和度動態も高いことが観察され、これらの生理学的因子は高所身体適性の予測のための生理学的指標になりうる可能性を示唆していることが認められた。
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