研究分担者 |
藤本 潔 南山大学, 総合政策学部, 助教授 (50329752)
長谷川 均 国士舘大学, 文学部, 教授 (80208496)
小池 一之 駒沢大学, 文学部, 教授 (20052483)
川瀬 久美子 愛媛大学, 教育学部, 講師 (40325353)
大平 明夫 宮崎大学, 教育文化学部, 助教授 (00262824)
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研究概要 |
本研究では,完新世後半の海岸域における地形変化を微地形の詳しい検討や,微化石分析をはじめとする堆積物の各種分析,加速器質量分析計を用いた年代測定結果などに基づいて高精度に復元するとともに,マングローブ海岸における炭素の蓄積や,脆弱な珊瑚礁域の海岸環境に影響を及ぼす流域からの物質供給についても斜面物質の移動や土地利用の変化に注目して検討した. その結果,十勝川低地や伊勢湾岸の雲出川低地などの沖積低地において完新世後期における海岸線の変化と海水準変動に関して検討が行われ,完新世後期の海岸線が詳しく復元されたほか,東南アジアのデルタなどにおいてもこれまで十分な復元を行うことのでなかった完新世後期の特定の時期に関する海岸線および堆積環境/地形環境の復元が行われた. また,日本各地の砂州地形を比較検討することにより,バリアーの形成が完新世の海面上昇期に共通に行われたのに対して,バリアーによる閉塞が始まる時期および完了する時期には,地域ごとの地形・堆積物供給・地殻変動などの条件が反映されていることが明確になった. 一方,開発行為とサンゴ礁浅海域の変化に関しては,白保サンゴ礁を例に検討した結果,サンゴの分布や海草類の分布の大きな変化が、陸域での「土地改良事業」の時期と一致していることが明らかにされ,堆積物中の化学肥料や家畜の糞尿の影響で海草帯が拡大するという変化が生じるなど,陸域の開発がサンゴ礁浅海域の生物多様性などに影響を与えていることが明らかにされた. さらに,西表島および奄美大島におけるマングローブ林の地下部炭素蓄積量の見積りが行われ,西表島の現マングローブ林の大半は,約1000cal BPの地盤隆起に伴い海側に新たに成立したもので,巨大地震に伴う間欠的な地盤隆起が炭素蓄積の場の海側への拡大に貢献してきたことが指摘された.
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