ゼラチンを用いた皮膚にやさしい繊維の開発と被服素材への応用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11480021
• 研究機関: 奈良女子大学
• 研究代表者: 松生 勝 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (80091841)
• キーワード: ゼラチン / ポリビニルアルコール / ブレンド / 1次元彎曲PSPC / ゲル-結晶化 / ミクロ相分離 / 延伸

研究概要

皮膚にやさしい下着やおむつカバーの素材となる繊維の開発は欠くべからざる重要課題であるが、そのステップにいたるため、具体的には以下の段階を踏みながら、研究を進めていった。その実績は以下に列挙する。
1)まずゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)ならびにブレンドのゲル形成過程でのX線散乱強度測定を行った。しかしこの実験を行う前に、装置の性能をチェックするために購入した理学電気社製の1次元彎曲PSPCを既設のX線回折装置に取り付け、非晶性ポリエチレンテレフタレート溶融急冷フイルムについての等温結晶化やポリエチレンのゲル化についての実験を行った。この実験により、回折強度の時間変化を時間分割測定により、追跡できることを確認した。
2)PVAについては、溶媒のピークが強く、結晶化による回折強度ピークがバックグラウンドの中に埋もれてしまう傾向があったので、バックグラウンドをトータルの強度から差し引く方法を確立した。
3)ゼラチンについては、結晶のサイズや結晶化度が低いため、ゲル-結晶化のデータが極めて精度良く得ることが困難であった。しかし溶媒からの散乱を差し引くことで、多少とも解析が進むようになり、ゼラチンのゲル化による分子の秩序化が確認された。
4)ゼラチン-PVAブレンドのゲル形成過程でのX線散乱強度測定を行った。溶媒としてジムソと水の混合液を用い、溶液を80度で10分間撹拌後、急冷してゲルを作成した。急冷が低温になれば、ゲル化に伴う結晶化が促進された。また、乾燥したフイルムはミクロな相分離がおこるだけで、延伸が可能であり、この方法が、肌にやさしい繊維の開発に応用できることを確認した。一方、急冷温度をPVAのスピノーダル温度より少し低い温度に設定すると、ゲル化の進行は緩慢になり、かつ結晶化の遅く、得られた乾燥フイルムはマクロなレベルで相分離が生じ、延伸は困難であった。
以上より、急冷温度を制御さえすれば、肌にやさしい繊維の開発が可能になることを確認した。今後の課題としては、ゼラチンとPVAのブレンド繊維に化学架橋をおこさせる方法を考慮している。

研究成果

• [文献書誌] Y.Bin,M.Matsuo: "Morphology and mechanical properties of low molecular weight polyethylene and ultra-high molecular weight polyethylene drawn up to 200-fold polyethylene"Macromol.Chem.. 147. 1-14 (2000)
• [文献書誌] T.Nakashima,M.Matsuo: "Morphology and orientation of crystallites of simultaneous biaxially stretching ultra-high molecular weight polyethylene films prepared by gelation/crystallization from solutions"Polymer J.. 33. 54-68 (2001)
• [文献書誌] Y.Bin,M.Matsuo: "Morphology and mechanical properties of swollen gels and dry gel films of poly (vinyl alcohol) prepared by crystallization from solutions under simultaneous biaxially stretching"Polymer. 42. 1183-1200 (2001)
• [文献書誌] Y.Sugiura,M.Matsuo: "Description of the state of deformation of ethylene-tetrafluoroethylene alternating copolymer films estimated by using a model proposed in terms of orientation of crystallites within a rod"Colloid & Polym.Sci.. 279(in press). (2001)
• [文献書誌] T.Nakashima,M.Matsuo: "Morphology and mechanical properties of ultra-drawn poly (vinyl alcohol) -starch blends prepared by gelation/crystallization from semi-dilute solutions"Colloid & Polym.Sci.. 279(in press). (2001)
• [文献書誌] M.Matsuo,Y.Bin: "Temperature dependence of the morphology and mechanical properties of poly (vinyl alcohol) films prepared by gelation/crystallization from solutions by X-ray and solid state ^<13>C NMR."Polymer. 42(in press). (2001)