着衣による湿潤感の感知構造とその中枢・自律神経系への影響を探るため、本年度は(1)透湿性の異なるモデル衣服を製作し、衣服内湿度の異なる着衣に対する被験者の心理評価を実施した。(2)KES法による衣服素材の物理特性測定並びにサーマルマネキンによる着衣の熱・水分特性評価を行ない、(1)の心理反応との対応について検討した。(3)内分泌反応測定のための予備調査を行なった。透湿性の異なるモデル衣服としては、不透湿フィルムに3段階の穿孔を施したワンピース型衣服を製作し、被験者実験に供した。穿孔の有無により衣服内湿度および皮膚濡れ状態に差を生じたので、これを用いて心理評価を実施すると共に、来年度実施予定である生理評価、特に中枢・自律神経系活動への影響の評価についても、予備実験並びに被験者による測定を行った。自律神経活動の評価には心電図測定によるR-R間隔変動を、中枢神経系活動の評価には国際10-20法による13部位の脳電図並びに脳波CNVを用いた。交感神経活動レベル指標LF/HFは、湿潤条件下で増加、低湿条件下で減少、副交感神経活動レベル指標HF/(HF+LF)は湿潤条件下でも低湿条件下でも減少したがいずれも有意差が見られなかった。R-R間隔変動の結果からは、湿り感、べたつき感が交感神経活動を増加、副交感神経活動を低下させる傾向が認められた。脳波測定からは、低湿条件下の方がα波含有率もβ波含有率も多い結果となった。CNVでは、低湿条件下の方が振幅が大きい傾向が見られ、湿り感、べたつき感はリラックス度を低下させ、覚醒状態も低下させるという結果が得られ、本年度の結果は平成11年人間生活環境系シンポジウム(札幌)にて発表、さらに平成12年9th ICEE Ruhr 2000(Germany)にて発表予定である。なお、異なる衣服素材による衣服製作並びに物理測定と着用心理反応との対応については、現在素材を購入して製作中であり、一部次年度に先送りとする。
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