研究概要 |
今年度の研究の目的は、理科授業における児童・生徒の認識の伸張に影響を与える対話活動を促す指導方略の分析にあった。ヴィゴツキーの指摘する外言と内言とが児童・生徒における対話活動の典型的な現れであり、これらの活性化を促すことが指導方略と考えることができる。この指導方略の開発において、ポートフォリオがきわめて有効であることが明らかとなった。 すなわち、理科授業において児童・生徒が間題解決を図るために、仮説を設定し、その検証と結果としての論理の構築過程がポートフォリオの記述として現れるのである。そこには、上述した論理の構築としての内言と外言の記録が現れるのである。そして、この過程の有効性・妥当性を示すために、ルーブリックスとしての評価システムの視点と方法の開発が必須であった。 この評価システムを捉える視点として、児童・生徒の比楡的な表現を設定した。その結果、科学概念としての萌芽の見出し、そして、その発展を目指した上位の科学概念の導入という指導方略を可能にした。これは、ロゴフ(Rogoff, B.)やブロンフェンブレンナー(Bronfenbrennner, U)らの社会文化的アプローチによる教授・学習過程の論考と軌を一にするものである。本研究で目指してきた対話的な活動についての、具体的なイメージを示すものである。授業目標の分析、単元の指導と評価計画、展開という一連の授業計画の中で、こうした視点を注入し、その実行を図り汎用性を図ることがまとめとして、来年度の課題である。
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