研究課題/領域番号 |
11480053
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
細川 英雄 早稲田大学, 日本語研究教育センター, 教授 (80103604)
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研究分担者 |
砂川 裕一 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (90196907)
佐々木 倫子 国立国語研究所, 日本語教育指導普及部・部長 (80178665)
長谷川 恒雄 慶應義塾大学, 国際センター, 教授 (10051567)
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キーワード | 日本語教員養成 / 日本事情 / シラバス / 教育実習 / 総合学習 / 早稲田大学日本語研究教育センター / 21世紀の日本事情 |
研究概要 |
今年度の活動としては、日本語教員養成における「日本事情」シラバス構築のためのモデルクラスとその実施を検討した。その手順の概略として、受講者は、モデルケースとして、まず細川の担当する早稲田大学日本語研究教育センターにおける「日本語・総合」クラスを見学し、その後、「研究」クラスに出席し、このクラスのコンセプトについて説明を受け、そのクラスの目的やねらいについてディスカッションを行う。次に、「総合」では、実際に学習者とともにレポートを書き、クラス討論に参加する一方で、このクラスの活動をカセットテープやVTRに記録として収録する。さらに、この結果を分析・解釈し、「研究」クラスでフィードバックし、受講者間で忌憚のない議論を行う。この「研究」プログラムは、まず体験によって、学習者が味わうグローバルな日本語世界を身を持って体験することを目論むものである。なぜなら、従来の日本語構造知識と教授法の習得が教員養成のすべてと考えるには、あまりにもその日本語世界は広くかつ深いということを知ってもらうためである。 日本語を学ぶということは、日本という社会における日本語による自己実現であり、学習自身の思考と表現・理解によるコミュニケーション世界の総体を受容することだからである。この体験と同時に、受講者には観察が義務づけられる。教室活動をどのように記録するかは、受講者にとって重要な訓練であるため、この作業を果たしつつ、受講者は教室の中で学習者一人一人がどのような活動を行い、その間のインターアクションがどのような学習効果を生み出しているかを学ぶ。 つまり、教室は、決して一方的に教師が学生に知識や情報を与えるところではなく、むしろ学習者同士がさまざまなかたちで支えあい、そのことによって教室という共同体での自己実現を図っていくプロセスを学ぶのである。同時にこの過程で、受講者は教室の組織化の意図と学習者への支援活動の重要性を知るのである。 さらに、その結果の分析・解釈へと進むことで、受講者は自らの気づきを分析・解釈というかたちで明確化し、第三者に提示する義務を負う。このことは、日本語教員自身の日本語運用能力に確固とした自信を持たせることにつながろうし、なによりも論理的な明確化のための思考とその方法論を学ぶと同時に、言語学習とは、他者との関係をインターアクションによって見直す作業であることを受講者は確認するだろう。 以上のように、「日本事情」教育を日本語教育の一環として組み込むことで、その教員養成の方向を明らかにすることが可能になると考える。この実践および理論については、「21世紀の日本事情」第3号に掲載予定である。
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