研究概要 |
現在のVLSIシステムは,回路技術としては2値論理回路,演算原理としては2進数演算を基本にしている.しかし,近年,VLSIの高集積化に伴い,配線量の激増や演算遅れ時間の増大などの性能限界が顕在化している.これに対して本研究では,従来の2値論理・2進数演算原理の限界を越える新しいシステム構築のパラダイムとして"Beyond-Binary Computing"を提唱し,以下の成果を得た. 1.非2進冗長数系を基本とする超高速算術演算アルゴリズムのファミリーを開発し,試作などを通してその有効性を確認した.具体的には,(i)基数4並列除算器,(ii)基数2-4-8 CORDIC演算器,(iii)SW数系に基づく再構成型積和演算データパス,(iv)冗長複素数系に基づく実数/複素数再構成型演算データパスなどの開発を行った.数系を演算データに応じて最適化することにより,演算時間・消費電力・配線の複雑さを大幅に減少できることを示した.さらに,多値フィールドプログラマブルディジタルフィルタを開発し,冗長数系と多値集積回路技術の相乗効果による高性能化の可能性を示した.これと平行して,非2進数系に基づく超高速算術演算システムの自動設計を可能にする新しいCAD技術を提案した. 2.擬似ランダム系列を情報担体とする同期式集合論理システムを初めて試作するとともに,これを発展させたチップ内CDMA通信方式を世界に先駆けて提案した.また,その実用化に向けた技術課題を明らかにした. 3.コンピュータシミュレーションを通して,酵素トランジスタに基づく無配線分子コンピューティングの可能性を示すとともに,最適経路探索や画像処理などへの応用を検討した.さらに,酵素トランジスタなどの人口触媒素子に基づく無配線集積回路が原理的に実現可能であることを実験的に確認した.
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