本年度は、前年度に開発したJava言語用の自己反映計算機構を元に、これを移動エージェント・システム専用になるように改良をおこない、実行時の速度を向上させ、必要メモリ量も削減した。このシステムFlyingwareは、通常のJavaアプリケーションを、自己反映計算によって自動的に移動エージェント化するものである。これまでに存在した多くの類似システムでは、アプリケーションを特定のクラスのサブクラスとして書かなければならないなど、プログラミング上の制約が存在した。しかしFlyingwareを使う限りにおいては、そのような制約は存在せず、プログラミングの労力が大きく低減する。またFlyingwareの特徴は、移動エージェントの配信に標準のメール配送プロトコルであるsmtpを使う点である。このため、送信先との間にファイヤーウォールなどが存在する場合も、メールを送信することができる相手ならば、問題なくエージェントを送ることができる。 また既存のメールサーバをそのまま使ったままで、送られてきたエージェントを自動的に実行するためのサブシステムFlightManagerも作成した。これを使わない場合、ユーザは、送られてきた移動エージェントを手動でディスクに保存、起動しなければならない。FlightManagerは、この一連の処理を自動化する。FlightManagerは、さらに、起動の際、Java言語のsecurity managerを用いて、エージェントが不審な挙動を示すと、実行を自動的に停止する。これにより、送られてきたエージェントを自動実行しても、セキュリティ上の危険が少なくなるようにしている。
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