研究概要 |
昨年度構築したヘテロジニアス型クラスタシステム(4-CPU搭載のSMP:1台を含むワークステーション4台とLinuxパソコン10台を100Base-TXのネットワークで相互接続したもの)による並列実行環境を用いて,種々研究を行った.このような分散メモリ環境では,メッセージパッシング型の並列プログラムを作成する必要がある.今年度は,この際に問題となる種々の事項のうち,主に次の2点について重点的に研究を行った.1)並列プログラムを構成する複数のプロセス間での負荷の均衡化、最適化;2)同複数プロセス間での通信オーバヘッドの削減.まず1)については,各プロセスの負荷情報を動的に収集・相互交換しながら,最適な負荷分散制御を図るための方式を提案した.具体的には,隣接するプロセス間だけの局所的な負荷情報だけでなく,周辺の負荷情報も積極的に収集し,かつ,過去の負荷の変化傾向から負荷の変化速度および変化加速度を求め、それらを用いて将来の負荷量を予測するという方式である.本動的負荷分散方式の詳細や評価結果については,学会論文誌等に報告している.一方の2)については,最も標準的な通信プロトコルであるTCP/IPと,同じく最も標準的なメッセージ通信ライブラリであるMPIとの組合せに注目した.そして,この両者に潜む処理オーバヘッドの特性を明らかにした上で,それらを解決するための新たな通信ライブラリの開発を行った.この通信ライブラリの性能を64ノード(LinuxPC)からなる中規模クラスタを用いて実測したところ,既存のMPI実装であるMPIPROやMPICHに比べて良好な結果を得ることができた.
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