マルチモーダル情報による動的環境の認知

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11480075
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 筧 一彦 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (90262930)
• 研究分担者: 齋木 潤 京都大学, 大学院・情報学研究科, 助教授 (60283470) ; 川口 潤 名古屋大学, 情報文化学部, 教授 (70152931) ; 島田 正治 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (20262462)
• キーワード: 音源定位 / 視聴覚情報統合 / 視聴覚情報の対応づけ / 音源定位の時間特性 / 生態的音響知覚 / 頭外音像定位 / 外耳道伝達関数 / 潜在記憶

研究概要

同時に複数の音源が存在する場合の音源定位につき検討し、帯域が異なる2音源が存在するときターゲット音源の定位が他方の音源に引き寄せられる現象を見い出した。音源開始の同期性と音色的識別性要因との関係を検討し、必ずしも前者が要因ではないこと、2音源が音声である場合には音源同士の定位の干渉が起こりにくいことを明らかとした。
2個の音源の運動を仮現運動により実現し、音源の動き知覚について調べた。その結果、ターゲット音が静止し非ターゲット音が動く場合には、ターゲット音の動きに関する知覚が悪くなること分かった。動き開始の同期性や判断バイアスの観点から検討を進めている。
音源信号と音源同定のしやすさの関係を実用的視点から検討し、非定常、広帯域で聞きなれた音は、狭帯域で定常な雑音源よりも実効音源同定率で十数パーセント向上する、空間および音源信号の情報が事前に1点で与えられれば距離の同定率が大きく向上する、距離・方向定位の結果から、2次元的音源定位の結果を実用的に推定可能であることを示した。
標準的な音源定位実験法の確立のために、頭内音像・拡声受聴の定位について検討し、刺激音提示時間とその断続提示回数に対する定位精度の変化を明らかとした。
伝送路誤りによって生ずる信号の付加、移動、による音像移動の検知限、移動知覚の生起する割合を求めた。また、伝送誤りの瞬断による音の途切れが知覚される割合を求めた。
両耳受聴での頭外音像定位を実現するために必要な適応逆フィルターとして、短時間で逐次処理動作が可能な構成を見い出し、高収束で安定な動作が可能なことを実証した。
発話動作のある顔と音声に関するマルチモーダルな研究の一環として、自分の顔の認識についての研究を行い、自分の顔は他人のそれより視覚探索が早いこと、これはポップアウトによる自動処理過程ではなく、逐次的処理であることを明らかとした。

研究成果

• [文献書誌] H.Fujii,K.Kakehi: "Effect of the non-target sound source on the target sound source localization"Proceedings of International Conference on Psychology 2000. 53 (2000)
• [文献書誌] 藤井洋之,筧一彦: "2音同時呈示条件における音源定位-相対的位置関係と定位位置-"音響学会聴覚研究会資料. H-2000-83. 1-7 (2000)
• [文献書誌] 堀内俊治,穂刈治英,島田正治: "音像定位受聴試験の実験法に関する研究"信学技報. EA-2000-51. 1-8 (2000)
• [文献書誌] 別府大幸,穂刈治英,島田正治: "適応逆フィルタを用いた頭外音像定位に関する検討"信学技報. EA-2000-52. 9-16 (2000)
• [文献書誌] 石附達也,穂刈治英,島田正治: "HRTFにおける最小位相モデルの適用に関する検討"信学技報. EA-2000-85. 33-40 (2000)
• [文献書誌] H.Watanabe,J.Kawaguchi: "Priming over the day span : Memory for the content of Plans"Applied Cognitive Psychology.
• [文献書誌] 筧一彦(映像情報メディア学会編): "ヒトの情報処理モデル(映像情報メディアハンドブック)"オーム社. 5(652) (2000)
• [文献書誌] 川口潤(甘利俊一・外山敬介編): "非言語情報の潜在記憶(脳科学大事典)"朝倉書店. (2000)