本年度は、マイクロホンアレーを用いたハンズフリー音声認識アルゴリズムの研究のため実環境における音環境データの収録、音響特性データの収録を行った。さらに、ハンズフリー音声認識のため、以下のアルゴリズムの研究を行った。 1)実環境における音響環境の測定 実際の環境におけるハンズフリー音声認識を実現するためには、環境に存在する多様な音のデータを収録する必要がある。本研究では、80種類の音源データを収録した。また、残響可変室、畳の和室、個人オフィスなどの音響伝達関数の測定を行った。 2)環境音の識別 環境音のデータを用い、環境音を隠れマルコフモデルを用い識別を試みた。ケプストラム分析に基づいた隠れマルコフモデル表現により、80種類の雑音を約90%で識別可能であることを示した。 3)音声認識のための適応型マイクロホンアレービームフォーミング法 適応型アレーの対象信号として音声信号を用いた場合の最適化法について検討し、複数の話者の音素バランス文章から求めた代表的ターゲット信号を用いることにより、より少ない計算量で高い認識性能を得る適応型ビームフォーマを設計できることを示した。 4)残響環境におけるマルチビームマイクロホンアレー マイクロホンアレーは残響のある環境では効果が不十分であるが、反射を有効に使うことでSNR改善することができる。環境に関する予備情報なしに、マルチビームマイクロホンアレーを利用する方法を提案し、さらに、壁のインピーダンスを補正することで大幅な認識性能が得られることを示した。
|