ムービングオブジェクトとは、例えば街中を走り回る車や人など、その位置や大きさなどの値が空間的かつ時間的に変動するという特性を有するオブジェクトである。これは、従来の静的なオブジェクトの概念にはなかった際立った特徴である。一方、GPSやモーションキャプチャシステム技術の近年の著しい進歩により、ムービングオブジェクトをデータベースに取り込みたいという要求がある。このような、これまでにない発想を可能にする、ムービングオブジェクトデータベースを構築しようという研究は、ごく最近一部研究者の関心を惹くようになってきたものの、それを本格的に研究・開発しようとしているプロジェクトや研究結果はまだ国内外に多くない。本研究はこのようなムービングオブジェクトデータベースシステムを世界に先駆けて実現しようという研究テーマである。そのために、研究の初年度である平成11年度は、3次元ムービングオブジェクトデータモデルを明らかにすることに加えて、研究を具体的に実施するために、3次元空間のムービングオブジェクトの世界として、自動車にGPSを取り付けて時々刻々自動車の緯度、経度、高度、速度等の車両データを携帯電話を用いて基地局に伝送して、データベースに格納するプロトタイプシステムを構築した。更に、データベースから時間的・空間的な問合せを処理できる検索言語MOQLを設計・開発し、実際にプロトタイプシステム運用を通して、今後の問題点を探った。
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