救急隊員が気管内挿管を行っているアメリカバージニア州では、その15%が食道に誤って入っているという情報があり、また現行の通信システムでは、救急隊員に適切な指示を出す、メディカルコントロールが確立されていない。見通し通信(仲上-ライス フェージング)は、通信の中でももっとも簡単な通信で、多量のデータを伝送できる。本研究は、天頂に飛来し、一見、止まって見える衛星があれば、都市部を走行中の救急車から高速データ通信(アップリンク)が可能と考え、その調査研究を行った。 都市環境での受信電力測定では、長楕円軌道衛星COMETS衛星(さきがけ)のICEビーコンを走行しながら受信電力を測定し、高仰角(73度)では、静止軌道に比して格段の見通し率の改善することを確認した。 都市環境における光学的障害物計測では、試験走行のデータから、2つのアンテナ(空間的タイバーシティ)を2.3m以上離さすとシャドウイングを高い確率で回避できることが算出された。 また過去の東京都救急搬送データより、日本全国4800台の救急車には、呼損率0.02では6回線、全国規模では84回線が必要であること、またITU BT.500-9に準拠したMPEG-2医療画像評価より、帯域3.0Mbpsが最適であることが分かった。 搭載機器、ことに中継器では、相互変調積による影響を回避すべき設計を提案した。 また高軌道衛星の経済性として、IMT-2000との比較、また医療費削減と打ち上げコストの比較を、急性心筋梗塞をモデルに検討を加え、高軌道衛星4機が十分採算の合う通信手段であることが求められた。
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