研究分担者 |
平田 孝道 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80260420)
大原 渡 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80312601)
金子 俊郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30312599)
佐藤 徳芳 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40005252)
飯塚 哲 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20151227)
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研究概要 |
(1)磁力線に沿うイオン(プラズマ)流の速度シアーを精密に制御できる,従来とは異なる新しいプラズマ源を開発した.これはまず合成プラズマ生成法の原理に基づき,直線型円筒容器の一端から酸化バリウム電極を1100℃まで加熱することで熱電子を供給し(電子源),他端からタングステン電極にカリウム蒸気を吹き付け,接触電離で発生したイオンを供給することにより(イオン源),全体としてプラズマを発生させるというものである.このプラズマ生成法では,空間電位が電子源のバイアス電圧によって決定されるため,イオン源のバイアス電圧を変化させることにより,空間電位とイオン源電位の差でイオン流の発生・イオン流速度の制御が可能となる.この方法を用いてプラズマを発生させ,静電イオンエネルギー分析器により磁力線方向のイオンエネルギー分布関数を測定したところ,イオン源のバイアス電圧に比例してイオン流のエネルギーが変化することが明らかになった. (2)次に,イオン源のタングステン電極を同心円状に3分割し,それぞれを電気的に絶縁することによって独立にバイアス電圧を印加できるように工夫した.上記同様の測定を行った結果,半径方向の位置によってイオン流の速度を独立に変化させられることが明らかになり,その境界領域で磁力線に沿うイオン流の速度ジャンプを発生させることに成功した.なお,この時の半径方向空間電位分布の測定から,速度ジャンプを発生させた場合でもプラズマ領域内では空間電位がほぼ一定であることが分かり,E×Bドリフトの存在しない条件で,イオン流速度シアーに起因する不安定性・乱流に関する根源的な研究を行うことが可能となった. (3)上述のプラズマ源によりイオン流速度ジャンプを発生させた場合に,周波数が数kHzである2つの不安定揺動が観測された.一つは,密度勾配の存在しない中心付近で観測され,速度ジャンプ領域に局在していることから,ケルビン・ヘルムホルツ不安定性に関係しているものと考えられる.もう一つは,密度勾配の存在する周辺部の速度ジャンプ領域で観測され,ある閾値以上のイオン流速度の場合に励起されていることなどから,ドリフト波およびイオン音波などに関連した,これまで実験的に観測されていない,新しい型の揺動であると考えている.以上の結果から,沿磁力線速度シアーが様々な低周波揺動を励起する要因である可能性が示された.
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