本研究では、プラズマCVD法による大面積薄膜生成法の確立を目的とし、大口径表面波プラズマ装置を用いたダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の成膜特性およびカーボン系薄膜の膜質診断に関する研究を行った。以下に本研究成果の概要を列記する。 (1)実験装置の整備:直径40cmのステンレス製真空容器の表面波プラズマ装置を用い、ガス吸排気系の整備および基板ステージ、基板温度制御装置などのハードウエアの整備を行った。 (2)プラズマ成膜用プラズマ特性の診断:2.45GHzマイクロ波源を用いてアルゴンおよびヘリウムの表面波プラズマ生成実験を行い、プラズマパラメータの空間分布特性を調べた。とくにダウンストリーミング領域の基板ステージ近傍では直径10cm以上に亘り±5%以内の空間均一性が得られた。 (3)ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜特性:ヘリウムガスにメタンガスを混入した表面波プラズマ放電を用いてシリコン基板上に室温下で成膜を行い、直径10cm以上に亘り均一なカーボン薄膜が得られることを示した。また、成膜速度はHe/CH_4流量比に大きく依存し、He/CH_4比が280/6sccmのとき約16nm/minが得られ、メタン比の増加とともに成膜速度の低下が見られた。 (4)電界電子放出特性およびその他の膜特性:水素化DLC薄膜の電界電子放出特性の測定の結果、電界4V/μmのとき電流密度1μA/cm^2の電子放出が得られ、これは結晶性ダイヤモンド膜に匹敵する特性であることを示した。また、プラズマ表面処理の効果、窒素ドープの効果、バイアスの効果およびガス比による電界電子放出特性および膜質の違い等を明らかにした。 (5)研究成果の取りまとめ:本研究の研究成果は発表予定も含め学術論文に9件、国内開催の学会、研究会に34件(シンポジウム講演2件)、国際会議に11件発表した。
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