研究概要 |
1.プラズマ中の電子を量子力学・量子統計に従って記述し,かつ,薄膜などにも応用できるだけの規模をもつシミュレーションが可能な方法として,電子液体の密度を力学的自由度として取り扱う密度汎関数法に基づく分子動力学計算を行った。結果として,液体金属水素における陽子の2体分布関数,陽子・電子相関関数,圧力,陽子の拡散係数などが求められた。 2.密度汎関数の形として,単純なThomas-Fermiによるものから,固体電子論において標準的に用いられている近似までを適用し,物理量にどの程度の影響があるかを調べた。この結果は密度汎関数法の精度の一つの目安となる。 3.第一原理に基づくシミュレーションにより,密度汎関数分子動力学法の結果を較正するために,分子の形成を記述するのに適したタイトバインディング法による分子動力学を実行した。 4.電子系の存在がイオン系に与える効果の簡単で有用な近似として,イオン間相互作用を湯川相互作用とする方法がある。この近似に基づく分子動力学シミュレーションのコードを整備した。 5.Pentium等のPCに用いられているCPUの性能の向上を利用し,これらのCPU複数(PCクラスター)による並列計算で大規模シミュレーションが可能であることを検証した。量子シミュレーションの基礎となる古典シミュレーションでは,高速多重極展開法を並列ライブラリーMPIの上で用い,粒子数が10^5〜10^6規模の計算が実用的な時間内に可能であることを確かめた。また,液体金属水素に対しては,10^4規模のシミュレーションが可能なことを示した。
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