固体電解質型燃料電池は、広い表面積、電気抵抗の低減、多層化等を実現するため、薄膜材料の使用が必須となる。水溶液合成法は、大きな面積や複雑な形状を持つ基板に対し製膜することが容易で、またこのプロセスは高温を必要とせず、常圧のもとで行うことができる上、特殊な装置を必要としないため、コストの大幅な低減が可能となる。さらに生成した膜の均質性も高くなると考えられる。との水溶液合成法の特徴を生かし、製膜中に水溶液成分を変化させることにより、異なる固相が混じり合いながら徐々に入れ替わる、いわゆる傾斜構造をもった電池を作製し、熱膨張を連続的に変化させることにより、熱応力の問題が解決されると考えられる。金属フルオロ錯体溶液にフッ化物イオンと安定な錯体を形成するホウ酸を加えることにより、フルオロ錯体の加水分解反応が進行した。この反応により、電解質ならびに電極の材料となるジイレコニア及びランタン遷移金属系グロブスカイド型酸化物を水溶液から合成することを可能とした。反応機構を精密に解析した結果、種結晶の存在ならびにその粒径や分散状態が、水溶液合成に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。更に、水溶液からの合成により、常温・常圧下でYSZ電解質上にLaMnO_3を高分散に積層できることが明らかとなった。YSZの部分的な溶出とLaMnO_3の析出が同時に進行していることが想像され、両相が混合しながら移行する構造が作製できる可能性が示された。また析出粒子の表面には多数の凹凸があり、非常に反応性の高いことが推察される。
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