研究概要 |
平成11年度はまず大電流レーザーイオン源駆動用エキシマレーザー系の調整試験,プラズマ発生試験,及びイオン引き出し実験を行い,空間電荷効果を明瞭に観測できるアンペア級の強度で^<63>Cu^+イオンビームを発生することに成功した.これを誘導加速器に接続し,強度0.1A,エネルギー150keVまでのパルスビームが得られることを確認した. 一方,ビーム輸送実験用の静電四重極チャンネルについても電極の位置合わせ,高電圧印可,及び真空試験を経て誘導加速器に接続され,ビーム入射実験が行われた.当初,四重極電磁石を用いて誘導加速器からチャンネルへのビーム光学的マッチングを取る予定であったが,空間電荷効果によるビームの発散が激しく,所定のエミッタンスでビームをチャンネルに入射することが不可能であった.そこで,誘導加速器からのビーム強度が十分大きいことを利用して,四重極チャンネルを誘導加速器から離して設置し,大きく発散したビームからエミッタンスの良い部分のみスリットで切り出して入射させる方法を試みた.スリットはマルチホールアパーチャーとし,孔径を動径方向の位置毎に変化させることにより,入射ビームの強度プロファイルを制御できるようにした.今回は一様な孔系分布及びガウス型の分布を試みた.これによりそれぞれ近似的に線型な空間電荷力および非線型項を含む空間電荷力を設定できる.これらの実験配置にビームを入射し,まずファラデーカップによりチャンネル通過後のビーム電流を測定したところ,ビーム透過率が極めて低いことが判明した.原因としては四重極チャンネルと誘導加速器との軸合わせの精度が低いことが考えられ,再度調整を行っている.したがって本年度に予定していたエミッタンス測定系の試験は来年度に持ち越される見通しとなった.
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