研究概要 |
レーザーイオン源から大電流低エミッタンスビームを発生するための紫外レーザー照射系の開発は順調に進み,結果的に当初使用していた可視レーザーの場合を上回るビーム強度を得ることができた.またMCPとCCDカメラを用いてビームエミッタンスの時間分解測定に成功し,実際にレーザーイオン源からのビームのエミッタンスが1パルスの間で時間的に大きく変化することを見出した.しかし紫外レーザーを用いても予想された低いエミッタンスは得られなかった.この結果から,プラズマの電子温度だけでなく多数の因子間の複雑な相互作用によってビームのエミッタンスが決まっていることが明らかになった.一方,静電四重極チャンネルをレーザーイオン源+誘導線型加速器系に接続してビーム輸送試験を開始したが,ビームの発散が極めて強く四重極チャンネルにほとんど入射できないことが分かった.そこで平行平板状の引き出し電極を同心球面状構造に変更して再度チャンネルへの入射を試みたが,過集束のためビームは再び大きく発散した.したがって当初予定していた四重極チャンネル内でのエミッタンス増大測定実験は実施できなかった.実験に並行してチャンネル内のビーム粒子に働く非線形空間電荷力を記述する3次元粒子コードを開発し,ビーム挙動の数値シミュレーションを行った.粒子密度分布が一様及び非一様のビームに対してチャンネル内でのエミッタンスの推移を調べたところ,非一様ビームの場合に大幅なエミッタンスの増大が見られ,同時に密度分布は一様に近づくことが数値的に再現できた.これによりビームに蓄えられた非線形空間電荷エネルギーが解放されてエミッタンスの増加をもたらすというメカニズムを数値的に確認することができた.
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