研究概要 |
(1)河川水に含まれる溶存腐植物質の分離とキャラクタリゼーション 木曾川と琵琶湖水系の大小河川から採取した試料水を,限外ろ過により分子量分画したうえで,酸化銅分解によって得られるリグニンフェノールグループの種類ならびに組成比を検討した.その結果,溶存有機物のほとんどがリグニンに由来する腐植物質で占められていることを見い出した.リグニンフェノールは,分子量1000から5000の画分に集中していることから,腐植物質の分子量分布がこの範囲にあること,またその組成が集水域の植生を反映していることも明らかになった. (2)溶存腐植物質の定量法の確立 河川水の溶存炭素,蛍光強度,紫外吸収スペクトルを測定し,渓流水中の溶存有機物のほとんどが腐植物質によって占められることを確認した.腐植物質の定量には,蛍光強度の測定が有効であること,また,簡便な定量化のためには,紫外吸光係数を用いることができることを見い出した.とくに,350nmの紫外吸光係数(E,10cm光路長)と溶存有機炭素濃度(C,mgC/L)は,良い相関関係(C=140E+0.076)にあり,この関係は野外での溶存有機炭素の迅速定量にも利用できるものである. (3)溶存有機物の光分解性 河川水およびこれから抽出した腐植物質画分について,これを石英ボトルに封入し,太陽光を照射する実験からは,腐植物質が高い光化学分解性を示すことを認めた.分解量は腐植濃度と単純相関し,その対数値が積算日射量に直線的に対応することから,光化学分解は一次反応に近い反応によって進行することがわかった.
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