研究課題/領域番号 |
11480134
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
渡辺 興亜 国立極地研究所, 教授 (60111861)
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研究分担者 |
東 久美子 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (80202620)
神山 孝吉 国立極地研究所, 研究系, 教授 (70135507)
藤井 理行 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 教授 (20125214)
佐藤 和秀 長岡工業高等専門学校, 教授 (80113398)
古川 晶雄 国立極地研究所, 研究系, 助手 (70261120)
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キーワード | 積雪 / 酸素同位体組成 / 溶存化学成分 / 寒冷・温暖変態過程 / 積雪層内温度勾配 / 極域堆積環境 |
研究概要 |
本年度の研究の経過と成果 1.実験試料の採取:室内実験で用いる積雪試料は人工的に作成するのは困難なため、今年度は1月中旬に北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション北管理部雨龍研究林内において雪ブロック試料を採取した。試料採取地点周辺は国内で最も寒冷な地域のひとつに挙げられ、積雪堆積初期に寒冷変態を受けた雪試料として室内実験を行う際に適したものと考えられる。 2.野外観測:1.で積雪試料を採取した際、積雪層の初源状態を把握するために積雪断面観測および化学分析用試料採取をおこなった。この断面観測の結果、採取した雪試料は弱い寒冷変態を受けていたが温暖変態は受けていないことが明らかとなり、本試料は寒冷変態実験を行うための試料として適切なものであると判断した。また、断面から採取した化学分析用試料は、深さ方向に5cm毎、lOcm毎と異なった厚さで行った。これは、室内実験時に雪ブロック試料を分割する厚さを決定するための情報とするためである。 3.:上下差温恒温槽性能試験 昨年度に引き続き雪ブロック試料に温度勾配を生じさせる装置(上下差温恒温槽)の性能試験を行った。その結果、厚さ14cmの雪ブロック(密度0.35〜0.37g/cm)に対して、雪ブロック上部冷却板温度を極地研低温室温度と等しい-17℃、下部冷却板を本装置の能力限界-35℃に設定したとき、温度勾配は最大値(10℃)をとった。 4.:寒冷変態実験3において装置の性能試験を行ったものとほぼ同じ状態の雪ブロックサンプル(厚さ14cm、密度0.35〜0.37g/cm)に7〜10日間ほど、試料中に最大の温度勾配(試料上部-20℃、下部-30℃)をかけたところ、実験開始時と比較して実験後の化学成分濃度は、試料上部で濃度が上昇し試料下部で濃度が減少しているという結果を得た。この濃度変化は水蒸気の昇華凝結に伴って生じた可能性がある。今後この現象について温度勾配および実験継続時間など各種実験条件を変化させ、雪ブロック中での化学成分の移動の詳細を明らかにしていきたい。
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