研究概要 |
カドミウム(Cd)環境汚染による健康影響,とくに尿細管障害の頻度および程度を明らかにするために,富山県神通川流域Cd環境汚染地域住民を対象に,疫学調査を実施した.Cd汚染地域である婦負郡婦中町11集落に居住する54〜68歳の男性全住民116人,非汚染地域である同町1集落の同年齢の男性全住民30人を対象に,早朝尿の尿中β_2-ミクログロブリン(Uβ_2M),NAG(UNAG),グルコース(UGlu),カドミウム(UCd)ほかを測定した.汚染地域住民のUCd5.4μg/gCrは対照住民(3.8μg/gCr)より有意に高値であった.Uβ_2Mは汚染地域住民(0.337mg/gCr)が対照住民(0.176mg/gCr)より高値であったが,UNAGとUGluでは差はみられなかった.全対象者を54〜60歳,61〜69歳の2群に分けてUβ_2M,UCdを比較すると,61〜69歳においてUβ_2M,UCdともに汚染地域住民では対照住民より有意に高値であった.54〜60歳では有意差はみられなかった.以上の結果から,1940年前と後の出生年代の違いがCd暴露の影響に大きく関与していることが示唆された.
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